2年後に自分の事業部を作る。スマイルズ新卒1期生の気概。

2年後に自分の事業部を作る。スマイルズ新卒1期生の気概。

プロフィール

アートディレクター小池真緒

兵庫県西宮出身。グラフィックデザインを軸に展示構成や什器設計、好きなことを追っては作るを繰り返す。大学3年生の夏、スマイルズにたまたま訪れた時、事業の幅が広すぎる!と興味を持ち、2021年入社。明太子パスタ屋のVI、文喫での展示設計、写真館の運営、有料道路のブランディング戦略など、多岐に携わる。スマイルズらしからぬグラフィックが得意です。ラッキカラーは青。

アルバイト現場で確信した、「ブランドは人で出来ている」
美大や芸術系の学生って積極的に就職活動をしない人や卒業後も就職しないで制作を続ける人も多いですが、私はどこか全然違う場所に身を置いてみたいと思っていました。 活動はいろいろしていたけれど、社会との接点を持っているようで持っていない感覚があったんです。「まだ見たことのない面白いものを作りたい」と思っても、自分ひとりの力ではそもそもできないし、仲間内でやるにしても世界がまだ狭い。だから世界を広げたくて、絶対就職しようと考えていました。

3年生のときに、東京の会社を何社かめぐる機会があり、某大手通信会社のような誰もが知っている大企業から気鋭のデザイン事務所など5〜6社を見学しました。そこでスマイルズと出会って面白そうだと直感し、当時京都に住んでいた私は、京都のPASS THE BATON *¹ でアルバイトをはじめたんです。

店舗では社員さん2人のアイディアや世界観や意識みたいなものがそのままPASS THE BATON というブランドの姿になっている様子を目の当たりにしました。信念をもっている人がやっていることのかっこよさに心動かされ、「スマイルズに入る」と決めました。

入社直後の苦渋。バラバラの新卒1期生。
入社後すぐに同期だけで回す新卒プロジェクト(兼 研修)「One Million Powers*²」 が始動しました。「100万円を100万1円以上にする」というお題だけが渡されて、なにをやるか、どうやってやるかなど全て新卒3人で決めて実行するプロジェクトです。これが企画の段階からとにかく迷走続きでしんどくて。最終的には写真館と一緒に撮影イベントを実施して、来てくれた人たちの喜ぶ顔を見て達成感を味わえましたが、「もっとやりきれたはず」と今でも思う、ほろ苦い思い出のプロジェクトです。

One Million Powersの企画として、スマイルズ×いとう写真館による3日間限定撮影イベント『イスに座ろうとしたら』を開催。
ひとつのイスに家族や友人と一緒に座る瞬間をフィルムカメラで撮影し、撮影側で「素」の1枚を選定し送った。

迷走の要因は、今思えば出会ったばかりの3人それぞれの得意なことや任せられることを十分に確認しないでスタートを切ってしまったこと。お互いを十分に知らない手探り状態のまま「そろそろ(企画を)決めないとやばいよ!」というタイミングまで右往左往でした。

中途ばかりだったクリエイティブチームで、新卒1期生に寄せられている期待を同期3人でひしひしと感じてしまって。3人とも負けず嫌いだったから「誰よりも輝きたい!」という思いが強くなってしまった。だからそれぞれ全力なのに、人が頑張ってるところに変に絡まって水を差しちゃったりとか。視野も「めちゃ狭!」っていうぐらい、お互いのアイディア一つ行動一つに寛容になれていなかったですね。今となっては当時の追い込まれっぷりも3人で振り返れますが、その時は本当にお互いの良さをくすませあっていました。

切羽詰まってきた頃に写真館の案を私が出し、それまでまったく重ならなかった3人の意見がはじめて一致しました。「椅子の"座りにくさレベル"を提示してみよう」などのアイディアも出始め、企画がようやく膨らみだしました。企画を良くしようと2人もたくさん動いてくれてようやく手ごたえを掴みかけましたが、てんやわんやのうちに準備期間も足りず、目標は達成できずじまいでした。それでも、来てくださった方には素敵な写真をお届けできたと思います!事前準備の重大さを思い知りました。


領域はデザインだけじゃない。スマイルズのデザイナーの仕事。
デザイナーとして入社した意識はほとんどないですし、ロジカルに頭を使う比率が高いプロジェクトも多いので、デザインだけで関わることは少ないです。デザイン以外のこともなんでもやりたい。入社してすぐのほうがその思いは強くて、むしろ今のほうが割く時間の割合はデザイナー寄りになっています。デザインの世界ってやっぱり奥が深いし、どこまでいっても完成しない。私がどんな人間でなにができるか、デザインという自分の武器を磨くことでもっと伝わるようにしたいと思っています。

最近、KISARAZU CONCEPT STORE(以下、KCS )*³ という案件に関わりました。"約3,000㎡の空間に洋服やアイテムが並ぶファッションのテーマパークで、新たな服のサイクルを生み出す実験場"という大規模なもの。デザインは先輩デザイナーのキムさんと私の2人で、キムさんのディレクションを横で学びながら、2人で相当な物量のデザインをしました。業態を0から作るときに決めなくちゃいけないことの膨大さと、自分にも決定権があると同時にその倍ぐらいの責任もポンッて乗りかかってくることを体験できて、ハードだけどその分達成感もすごく大きかったです。

KSCは過去最多のスマイルズメンバーが関わっていて、それぞれに「ここは自分の仕事」と誇れる部分があります。
様々な広告、サイン、小さなポスターなんかもあって、一つの案件でデザインする幅がすごく広かったですがその中でも私は、試着室。「ストアの中に、他とは全然違う空気感の場所が1箇所ほしい」とお題を渡され、ウィリアムモリスのクラシカルな壁紙を中心につくりました。

モリスが考えていたアーツ・アンド・クラフツ運動*⁴ とKSCが目指すことが、根元を辿ると重なっていると思ったんです。KSCにある洋服やものたちは、1回世に出たけれど、その価値に気づかれることのないまま見捨てられそうになっているもの。それを1回見直そうよ、というコンセプトのもとに集まってきている。それはモリスの考えと繋がっているから、モリスを使わない選択はないと。そういうのを考えるのが多分好きなんです。


お題があってもなくても、プロジェクトにピタッとくるアイディアが自分の中から生まれると嬉しいです。もちろん、思っていたこととアイディアがしっくりはまらないとか、うまくプレゼンできなくて"おじゃん"になることの方が多いけれど、そういうときは伝え方が悪いことが大半。「なぜこのアウトプットか?」に対して感覚的な「これがいい」とか「美しい」だけではもちろん通じないし、ロジックがものすごく重要になる場合もあります。 プロジェクトチームは先輩後輩や役割関係なく、細かなところまで徹底的に話し合える環境です。フライヤーの制作1つでも結構な話し合いになるし、ときにはものすごくぶつかったりしますが、出自も役割も全然違うメンバーから得るものも多くて、会社に入ってよかったと思う瞬間です。
それでも、「(相手の主張も)理解はできるけど、なんでこんないいものが伝わらないんだ」ともどかしくて涙が、みたいなこともたまにありますよ。


自分の事業部を作りたい。
採用面接のときに、「自分の事業部を作りたい」って言ったのを、まだ思ってるんです。
漫画キングダムに、主人公「信」が持つ飛信隊っていう独立遊軍があるんです。飛信隊は全軍の中で自由に動ける王直轄の特殊部隊。何十万人規模の部隊の中で、この300人だけは自由に、誰の言うことも聞かずに動いて、責任ももちろん重いものが乗っかってくるというのがめちゃかっこいいと思っていて、そんな事業部をやりたい。この人たちは自由に動かしても絶対結果が出るから大丈夫、その人たちが考えていることを形にするのが正解、っていう信頼って最高ですよね。アルバイトの時に見ていたPASS THE BATON の社員のみなさんの姿が原体験かもしれません。
そうなったら案件のジャンルは問いません。何が来ても全部楽しいと思えるし全部やってやる。そういうパワーがある人に早くなりたい。夢は小池事業部を、己の国を作ることです。

もし24新卒が小池事業部に入るとしたら、精神的にマッチョな人がいいですね。私が精神的にスリムな方というか、ちょっと細めな部分もあるので、うまく行かないときにも「どうってことない、次つぎ!」と筋骨隆々に次のパンチを打てる人だと、一緒にやっていていいだろうなと思ってます。

注釈
*¹ PASS THE BATON 京都祇園店。現在は閉店。
*² One Million Powers
(通称OMP)。「100万円を100万1円にして返してください。」事業活動を通して世の中の体温があがるものであることなどを条件に100万円を使って、"価値"を生み出す研修。2021年度新卒研修として実施。
KISARAZU CONCEPT STORE
*⁴ 19世紀末から20世紀の初頭まで、イギリスと欧米諸国で盛んとなった国際的な芸術運動。機械の登場で衰退しつつある「手工芸の復興」や「装飾芸術の地位向上」を掲げた活動。

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